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日本「半導体」敗戦

日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)
日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)
おすすめ平均
stars国内でのイノベーションのジレンマの好例
stars技術を知って初めて書ける、本当の経営分析本
stars基本的には正しいと思うが
stars同様の問題は日本中の産業がかかえている
starsすばらしい本です

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【評価】★★★★☆
【短評】半導体業界だけではない。日本のモノづくり大企業は病気にかかっていると思う。

「日本の半導体企業は病気にかかっている。」「企業合併でも1+1=2にもならない」など、もと日立の技術職だった著者が、独自の調査やインタビューから半導体業界に切り込んでいる。

「なぜ、日本はサムソンやインテルに勝てないのか」が良く分かった気がする。

当たり前の事を当たり前にやるという事が、組織が硬直化してしまうとこんなにも出来なくなってしまう(自浄作用が働かなくなる)いう事が語られていた。

これはどの企業でも起こりうる事なので、イノベーションのジレンマになっていないかどうかの視点が必要だと感じた。

 

また、専門化・分業化はどの企業でも行われている事だが、デメリットが顕在化すると競争力が低下する事例が書かれている。

これもヒトゴトではなく、自分の会社に置き換えて考えておくべきだろう。

その事例とは、半導体設計者は生産コストを考えずに設計している、という事。

生産コストを考えていない設計書を渡された工場が、必死に原価低減を図るも設計後の段階では限界がある。
最初から生産コストを考えた設計の必要性が語られていた。(ゴールからの逆算ですね)

当たり前といえば、当たり前だがこれがなかなか出来ない。

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ちなみに、SEの時代ではこんなこともありました。

1.営業が無茶な条件の契約を取ってくる
2.案件取ってきたんで、SEさん、後よろしくー
3.なんとか頑張るものの、契約条件達成のために損益悪化⇒赤字
4.営業⇔SE、分かり合えない
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サムソンなんかでは一つのチームが、企画⇒設計⇒生産と上流から下流までを、自らが担当するため生産工程も考えた設計をせざるを得ない仕組みになっているらしい。

確かにその方が、全体最適で考えるならば合理的だと思った。

半導体業界の人ならずとも、読んでみる価値のある一冊だと思う。

 

===以下、twitterでのつぶやき===

『日本「半導体」敗戦』読書中。昔、「いずれ、日本の半導体産業は復興するだろう」と訳もなく、そう思っていた。この本を読んで、実は根の深い問題がある事が分かった。 #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P62.「日本の技術者たちは、120点を目指すのである。その際、コストに関する考慮はまったくない。」私自身もメーカー勤務なので共感できる。いろんな情報を聞いていると、ゴール設定は夢のような数字で、良いモノさえ作れば売れると思っている #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P70「日本製造業のマーケティングは、お寒い限りである。~市場を創造するなどいうことからはほど遠く~」ゴール設定や方向性を誤ってしまうのはマーケティングというを軽視し過ぎているからではないか? #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P.67「韓国サムスン電子の場合、設計を数チームで競わせ(ココで熾烈な競争が発生)、採用されたチームは日本と違い量産部隊に異動する」こうする事で生産コストにも責任を持った設計をせざるを得ない。これは大いに参考にしたい #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P.88「コンソーシアムや合弁会社を作るほどシェアが低下」しているらしい。これは1+1=2にもならない(狙いは2以上だが)具体例。違う組織をくっつける時には簡単にシナジーなどとは言ってはいけないかも… #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P.138「技術が得意な者が功績をあげ、無能な管理職になる」日本企業では多い事例なのではないだろうか?正しい評価と業務を与えるのはトップマネジメントの基本的な仕事だと思う。 #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P149.「日本が申請した特許が韓国・台湾メーカー……を育成してしまった。特許は出願するだけではだめなのだ」特許出願には随分と労力がかかる。取れたならば貪欲に利用料徴収・権利主張しなければ意味がない。 #dokusho

『日本「半導体」敗戦』読書中。P245.「~もし、日本半導体メーカーが、コストを含めた全体最適化をするようになったら、脅威だ。」日本企業は良い製品を作れば売れると過去の成功体験を間違って解釈しているフシがある。過去の体験を捨て去る事も重要であると気付かねば!! #dokusho

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